なみあいき
浪合記
解説３
「浪合記」は、1997年発行の「日本史広辞典」（山川出版社）では、次のように紹介されています。なみあいき【浪合記】 後醍醐天皇の皇子宗良親王の子尹良（ただよし）親王の事績を中心に、子良王（よしよき）や彼らを奉じる南朝遺臣の事績を記した軍記。尹良親王は1424年（応永三一）八月に信濃国伊那郡浪合で最期をとげたとされる。著者・成立年代不詳。現存本は、良王に従った者の子孫と称する天野信景が1709年（宝永六）に書写したとされる本にもとづくが、史料としての信憑性には疑いがあり、史実または伝説をもとに信景が偽作したものと思われる。「信濃史料叢書」所収。
浪合記を読まれる方は、このような評価を受けている文献であることを心に留めて読んだほうが良いでしょう。
浪合記はあまり長いものではありませんし、固いことを抜きにしても、それなりに読んで楽しめる軍記物だと思います。東海地方から長野・群馬あたりの地名や中世の国人がいろいろ出てくるので、そのあたりの郷土史に関心のある方は、より一層楽しめると思います。
【お願い】
現代語訳には誤りなどがあるかと思います。気付かれた方は、御指摘いただけたらうれしいです。それと、日本史広辞典を見ると、現存本は天野信景の宝永六年（1709）の写本にもとづいていると書いてあるのですが、このサイトで現代語訳に用いたものの奥書を見ると、「長享二年戌申九月十八日、天文二年癸巳三月五日写之了不可及他見者也、正徳三年癸巳九月中旬写之者也」と書いてあり、長享二年（1488）に書かれたものを天文二年（1533）、正徳三年（1713）に書写したことになっています。天野信景の写本以外の異本なのか、単に天野信景の書写の日付を写し落としたものなのか私には判断できません。このサイトに来て下さった方で、この辺のこと（浪合記の異本が知られているのかどうかとか）について何か御存知の方がいらっしゃったら、御教示いただきたく思います。（日本史や国文学とはまったく縁のなかった者なので、この辺になると自分ではどうにもなりません。よろしくお願いします。）
＊）その後、浪合記には大きく分けて３種類の伝本があり、天野信景書写による系統の他に、別の系統のものもある、というメールを綾茂さんからいただきました。浪合記には、かなりいろいろな系統の伝本があるようです。このへんのことは、綾茂さんのサイトで紹介されています。→ こちら
綾茂さん、浪合記情報、どうもありがとうございました。どうも浪合記にはいろいろな写本がありそうなので、もう少し調べてみようと思っています。